メディア 2025.04.24
春季総合特集Ⅲ(7)/Topインタビュー/瀧定名古屋 社長 瀧 健太郎 氏/供給網の変化に商機/品質や納期、スピード感重視
春季総合特集Ⅲ(7)/Topインタビュー/瀧定名古屋 社長 瀧 健太郎 氏/供給網の変化に商機/品質や納期、スピード感重視
繊維ニュース:2025年4月24日(木)掲載分
瀧定名古屋は不確実な時代の中、サプライチェーンの変化に柔軟に対応しビジネスチャンスを見いだす。
国内外を問わず、顧客のニーズに応えた品質や納期を意識したモノ作りの環境を整えていく。
コンバーターとしての機能を生かすことで活路を模索すると同時に、
既存のファッションに捉われず商権の拡大も狙い、スピード感を持った対応を図る。
――Gゼロ時代の到来で先行きの不透明感が増す中、国内もしくは海外で改めて強化していく取り組みを教えてください。
米国のトランプ政権に端を発した関税の問題は、米中2国間で捉えていました。
しかし、米国が導入を発表した相互関税は縫製拠点が集積するASEANの国々まで広がることになりました。
そうなると製品のサプライチェーンは大きく変わらざるを得ません。
当社としてはそうした変化に柔軟に対応し、適切なサプライチェーンを構築し、
これまで通りの品質と納期をきちんと維持し、製品を供給していくことが重要です。
一方で、大きな変化があるということは、そこにビジネスチャンスが
生まれる可能性も意味しています。
高いアンテナを張っていき商売につなげていきたい。
――こうした米国の関税発動で影響はありますか。
現状では、米国から仕入れる原料などで若干の心配はありますが、
対米向けはそこまで多くありませんので大きな影響はないとみています。
ただ、日本経済は冷え込むでしょうね。自動車は追加関税の対象になっており、
特に愛知県は自動車関連の工場が多くあるため影響は大きいでしょう。
――前期(2025年1月期)を振り返ると。
全体では減収増益でした。
服地部門の紳士向けは前の期がスーツやフォーマル含めて伸長しましたが、
生産調整の影響で不振でした。
ユニフォームやスポーツ向けといった新たな販路開拓も進みましたが
落ち込みをカバーし切れませんでした。
服地の婦人向けは紡毛コート地の動きが鈍く、
リピートの発注も停滞しました。
服地部門の中では、中国などで生地から縫製まで一貫して
手掛ける製品OEMも進めましたが補うことはできませんでした。
ただ、今後製品OEMをさらに推し進めることで生地の販売につなげていきます。
アパレル部門はボリュームゾーンに加えて、
感性にこだわりを持つ顧客の両方で販売が進み、売り上げ、
利益ともに大きく伸ばすことができました。
特に感性にこだわりを持つ顧客はプロパー消化率を高めていることもあり、
素材軸での提案で企画精度を高めたことが奏功しました。
――輸出はいかがでしたか。
売上高は43億円で前の期からは落ち込みました。
中国や韓国向けは苦戦したものの、欧米は伸ばすことができました。
海外拠点を中心に顧客への訪問頻度を増やしたことに加えて、
サステイナブルや環境認証の商品など
顧客の要望に合った商材を拡充したことが評価されました。
輸出は生地が中心ですが、前期は日本品の中国販売が減少しました。
やはり、中国国内の景気が減速しており、
価格が通りにくくなっています。
また、日本でのモノ作りで納期を要することがネックになっています。
製品の輸出は欧州向けが苦戦しましたが、
中国向けで一部始まりました。
今期売上高は全体で50億円には近づけたいと考えています。
――今期伸ばしていく分野を教えてください。
これまでも力を入れてきましたが、既存の重衣料のファッション分野から
商圏を広げていくことが重要と考えています。ユニフォームやスポーツ、
アウトドア向けはもちろん、他の分野にも手を伸ばしたい。
生産については中国の現地法人を活用し、海外品比率を高めていきます。
――産地との取り組みは。
輸出を進める上では染色整理工場との協業が一つのポイントとなるでしょう。
さまざまな変化に対して受け身の姿勢ではいけません。
販路開拓などを含めて積極的に動いている産地企業と連携しつつ
情報共有も図りながら、一緒に開発やモノ作りを進めていける関係を築いていきます。
〈昭和時代の思い出/昭和と令和の給与事情〉
「昭和元年のサラリーマンは月給80円だった」と話す瀧さん。賃金や食品などの物価の変遷、国内外の出来事といった昭和の時代を紹介するサイトを閲覧し、「高度成長で毎年給料が上がり続けていた」と改めて認識した。片や現在の給料事情は中小企業を中心に必ずしも好景気によるものではない。「コストプッシュ型であるため、それで給料が上がってもいずれ限界が来る」と指摘。今後の経済と米国政権による関税を憂う。
【略歴】
たき・けんたろう 1999年瀧定入社。
2010年4月瀧定名古屋取締役、14年1月瀧定紡織品〈上海〉総経理兼瀧定香港総経理、18年1月瀧定名古屋取締役職能部門担当補佐を経て、同年8月から現職