メディア 2024.11.07
秋季総合特集Ⅳ(8)/Topインタビュー/瀧定名古屋 社長 瀧 健太郎 氏
/効率販売で在庫残さず/素材提案、QRに力
秋季総合特集Ⅳ(8)/Topインタビュー/瀧定名古屋 社長 瀧 健太郎 氏/効率販売で在庫残さず/素材提案、QRに力
繊維ニュース2024年10月24日(木) 掲載分
•瀧定名古屋は得意とする素材軸での提案を進めることで拡販につなげる。
サステイナビリティーの進展によって、モノを作り過ぎない傾向が顕著な中、
こだわったモノ作りでの糸や生地といった素材からの提案のほか、短納期対応(QR)で
顧客や時代のニーズに沿った商品を供給する。生地や製品の海外販売もこれまで以上に加速させる。
――繊維産業でこの数年で変わったと感じることはありますか。
モノの作り方が変わったと感じます。これまでは機会損失をどれだけ減らすかという
ことが重視されており、需要を予測した見込みでの生産が多くあったかと思います。
しかし、今はなるべく在庫を残さず、プロパーで効率良く売り切るということが
重要とされています。モノを作る絶対量が減っていますので、それに合った商品や
販売戦略が求められています。
――自社での変化はいかがですか。
これはある意味で意図して変えてきた部分ですが、総合職に就く女性社員が増えています。
今では各課に複数人在籍しており、女性の管理職もいます。結婚や出産など自身の
ライフステージの変化の中でも、頑張っている社員が多く戦力になっています。
今後はさらに女性に活躍してもらうためにも、事務や専門職で入社した人材を総合職へ
異動できる道も作りたい。これまで培った知識や経験は総合職でも必ず役立つはずです。
――上半期(2024年2~7月)の業績は。
全体では減収増益でした。価格転嫁が進んだことが増益に寄与しました。
セグメント別では服地部門が減収でした。
特に婦人向け紡毛コート地が苦戦しました。スタートの受注も良くなく、
リピートでの発注もありませんでした。紳士向けはスーツ地が生産調整の
局面を迎えており、スポーツ向けなどで取り返したかったですがカバーで
きませんでした。製品部門は各部署で素材からの提案が奏功しました。
生産も大きな混乱なく順調でした。
――海外販売の状況はいかがでしたか。
全体では減収でした。生地は欧米向けが伸びたほか、景気が減退している中国向けも
販売数量を伸ばすことができました。しかし、韓国向けはゴルフ需要が踊り場にある
ことから苦戦しました。一方で、製品の輸出は着実に進んでおり、実績もできつつあります。
商材は紳士向けの羽織物で、米国を中心に欧州への提案も図っています。
まだ、顧客との関係性を構築している段階ですので、商売としては点の状態です。
素材からの提案を軸に、今後はさらに顧客との接点や提案頻度を増やし、
当社の認知度を高めていきます。
――海外販売を進める上での課題はありますか。
日本品の生地販売となると、納期がポイントになります。特に中国向けはかなりタイトに
求められますのでQRが不可欠でしょう。しかし、国内産地は生産規模の縮小が進んでおり、
納期が読みにくい部分もありますので、当社としては早めに産地へ発注するようにしています。
――下半期(8~25年1月)に向けて注力することは。
受注状況は決して良くなく、売り上げは苦戦が続いていますが、なんとか前期を
超えていければと考えています。そのためのポイントとなるのが製品部門ですが、
以前から顧客との取り組みを強化しており、それが上半期で増収という形で表れました。
下半期もそうした取り組みを継続していくことで目標に近づけたい。
当社が得意とする素材軸での提案、そしてQRに力を入れていきます。
服地部門はこれまで出展していなかった展示会へも積極的に出展し発信を強化していきます。
――今後産地との取り組みで強化したい部分は。
当社は産地の取り組み先とはしっかり手を携えて進めてきましたので、今後もきちんと
継続していきます。問題は国産品のサプライチェーンをどう守っていくかです。
技術者の高齢化は避けられませんので、どうにかして維持しなければ、作れなくなる物も
出てくるでしょう。
日本全体を一つの産地として捉え、地域をまたぐような生産体制が必要なのかもしれません。
〈自身の変化を感じた時/中国語聞き取れず勉強再開〉
「中国語の聞き取りができなくなっていた」と話す瀧さん。上海駐在から10年が経過し、
新型コロナウイルス禍が明けたころに久しぶりに出張した際には、
「基本的な単語も分からなくなっていた」。日常会話程度であれば問題ないが、
専門的な言葉が飛び交う商談の場となるとハードルが上がる。
「もう一度やり直そう」と考え、単語から中国語の勉強を再開。
今後は出張の頻度が格段に増えることから机にかじりつく日々を送る。
【略歴】
たき・けんたろう 1999年瀧定入社。2010年4月瀧定名古屋取締役、
14年1月瀧定紡織品〈上海〉総経理兼瀧定香港総経理、
18年1月瀧定名古屋取締役職能部門担当補佐を経て、同年8月から現職