メディア 2023.07.07
世界中をしなやかに飛び回り そして名古屋に舞い戻る 一人ひとりに向き合う“シン瀧定流”へ
WWD JAPAN 2023年(令和5年)7月3日
世界中をしなやかに飛び回り
そして名古屋に舞い戻る
一人ひとりに向き合う“シン瀧定流”へ
WWDJAPAN(以下、WWD)
:2023年1月期の業績は経常利益は黒字を確保したが、営業利益は赤字だった。
瀧 健太郎社長(以下、瀧)
:23年1月期の営業赤字の原因はコストアップに加え、コロナ渦で中国やベトナムの工場が
ロックダウンした影響で、紳士服の主力工場の生産トラブルや物流トラブルが重なったこと。
こうした生産トラブルを含めたコロナ関連の影響は、昨年下期にはほぼ解消している。
24年1月期も足元の受注状況は2ケタ増と好調に推移しており、今年は黒字化の計画だ。
WWD:23年の日本アパレル市場をどう見る?
瀧:22年は販売チャネルやアイテムによってまだら模様という感じだったが、
足元の受注状況から考えると、全般的にかなりいい。ほぼコロナ前に戻ったと言っていいと思う。
ただ、アパレル市場の先行きは予測しづらい部分もあり、慎重な見方は崩していない。
この数年開発に取り組んできた基幹システムも完成し、DXの準備も整った。
テキスタイルのデータ化や一部ではアパレル製品の3Dモデリングにも着手している。
WWD:今も服地の仕入れベースで過半を占める日本のモノ作りが危機に直面している。
その一方で縫製も含め、メード・イン・ジャパンの見直しもある。どう見る?
瀧:服地にしろ、縫製にしろ、期待されているのは海外を含めると分断されがちな
サプライチェーンへのリスク対策だろう。
その一方で、日本生産は常に人手不足の問題を抱えている。
シーズンやトレンドの波が大きいアパレルの場合、発注の山が重なりがちという課題もある。
数年前から自社の物流倉庫の敷地に、ある縫製工場に入ってもらって、
現在は月産2500着にまで拡大している。
人材育成にもつながっており、ここはどんどん増やしていきたい。
WWD:この数年は意欲的に、商社の営業では少なかった女性の採用を拡大してきた。
女性は出産などのライフステージが変わるタイミングがある。どう対応している?
瀧:継続して採用を続けており、総合職は徐々に増えてきた。
(出産などについて)その都度、それぞれの社員の状況に応じて対応している。
現時点ではまだ、営業の女性管理職がようやく一人誕生したばかり。
制度設計全体を見直すほどのタイミングではない、というのが正直なところだ。
WWD:働き方改革についての考え方は?
瀧:女性に限らず、働き方に関しては、制度設計も含めて見直す時期に来ているのかもしれない。
女性・男性に関係なく、現在では50代にもなれば親の介護問題に直面する。
少子高齢化がますます進むことを考えると、今後はさらに大きな課題にもなるだろう。
これまでのような一直線のキャリアアップ、あるいは終身雇用前提の人事制度では、
実際の運用に限界がある。
WWD:かつてのような制度設計ではいずれ限界が来るのは確かだ。
どういった制度設計になりそうか?
瀧:社員全員の関わることであり、今はまだ何も決まっていない。
すぐに変えられるようなものではないし、そうすべきでもないだろう。
当社は社長が毎年全社員と個人面談する伝統があり、幸いにも一人ひとりの顔がきちんと見えている。
今後は他社の動向を見て横並びでの制度設計をする、といったことでは意味がなく、
社員一人ひとりに向き合った上で、じっくりと最適な制度を考えたい。