メディア 2023.05.02
TOP インタビュー 瀧定名古屋 社長 瀧 健太郎 氏
繊維ニュース 2023年(令和5年)4月25日
TOP インタビュー
瀧定名古屋 社長 瀧 健太郎 氏
瀧定名古屋はサステイナブル関連や機能性商材はもちろん、
モノ作りに深く関わる自家生産を拡充し、新たな価値として訴求する。
多様化の時代で消費者の指向は細分化が進んでおり、それぞれに合ったマーケットに狙いを定める。
供給のタイト化も進む中で生地コンバーターとして安定供給という至上命題も掲げ顧客のニーズに貢献する。
新たな価値提案へ
広くサクテや機能商材訴求
—インフレを好機とするには何が必要と考えますか。
まず、インフレによって原材料費や物流費、エネルギー費が高騰し、
そこに急速な円安が加わり、当社にとってはコストアップの掛け算という状況でした。
さらに、仕入れ先となる産地の疲弊もあり、供給がタイトになるなどモノ作りの面でも難しくなりました。
当社としては生地コンバーターとしての供給力で商品を絶やさないことを前提に、
新たな価値を伝えていくことに力を入れます。
具体的にはサステイナブル関連や機能性を生かした商材だけでなく、
当社で企画し産地でモノ作りをする自家生産品を拡充していきます。
多様化が進む時代の中で、マーケットは明確に色分けされるでしょう。
当社としては、サステナビリティーなど環境配慮な面も、
かわいいなどの感性の部分もさまざまな面で答えていくことが重要であると考えています。
—改めて今後の経済動向をどのように見ていますか。
世界全体で見ると米国をはじめとした金利の上昇などがあり、経済にも影響を与えそうですし、
ロシアによるウクライナ侵攻、大国同士の摩擦など不透明感は強いことは確かです。
全体としては厳しい状況が今後も続きそうですが、
国によってはウイズコロナになって人流の回復やインバウンド需要なども起こっていますので、
ファッション衣料の分野でも堅調に動く部分もあると考えています。
—前期(2023年1月期)を振り返っていかがですか。
全体では売り上げを大きく伸ばすことができました。
服地は利益面が厳しかったですが、紳士服地は合繊や機能性素材を打ち出しスポーツやアウトドア向けの開拓が進みましたし、
婦人服地は市場の回復や単価上昇が奏功しました。
婦人服はQRや素材軸の提案が寄与しました。
一方、紳士服は苦戦を余儀なくされました。
上半期はベトナムの物流混乱で生産が停滞した上に、トレンドのカジュアル化もあり受注が低迷。
為替の影響も受けました。下半期で収益回復のため手を打ちましたが、
上半期の落ち込み分をカバーできませんでした。
—自家生産品の販売と原料課が好調でしたがその要因は。
自家生産はモノ作りに深く関わっているため、各工程の情報を集めることで組み立てを十分に行うことができ、
きちんと供給できたことが貢献しました。
2014年から本格スタートしていますが、売上高は右肩上がりで推移しています。
原料の売り上げは前の期から倍で推移しました。
扱う糸はウールが中心で、梳毛糸、紡毛糸をそろえています。
尾州産地で糸不足が起きた時には、産地内に多く供給しモノ作りに貢献することができました。
—輸出の状況はいかがでしたか。
単体では売り上げは横ばいでしたが、グループ全体では増収です。
中国向けは足踏みしましたが、欧州向けはオランダの現地法人が活躍してくれました。
域内を精力的に飛び回って提案活動を進め、顧客のフォローアップを図ったことで、
継続的に注文が得られるようになりました。
—サステイナブル商材の状況は。
廃棄素材を再生したウール混の生地「リニュール」の実績は少しずつ増えています。
最近打ち出した、農家と連携した廃棄作物を染料に活用する「ハタケライフカラー」
もニーズがあるところへ着実に提案を進めています。
近赤外線吸収繊維「ナイロール」は赤外線盗撮防止や遮熱、保温機能があり、
ファッション以外にもさまざまな可能性があります。
実際、展示会では水着や傘、アームカバーなども紹介し多彩な用途に向けて訴求しています。
保温や盗撮防止といった機能でSDGs(持続可能な開発目標)にも貢献します。